2024年1月20日、東京での積雪も予想される冷たい雨のなか、有壬会東京支部連合会・第73回文月会合同総会がアルカディア市ヶ谷で開催されました。有壬会側からは今回の総会担当である、中部支部長の蒲谷堯先生(D44)のご挨拶をいただきました。続いて、文月会会長の新井文子先生(D63)より、昨年7月に行われた世話人会において新役員が選出されたことが報告されました。文月会設立当時からの理念である若手医師のサポートを継続してゆくこと、さらに女性医師の会への参加を促したいとの新会長の抱負を述べられました。また、学士会からの来賓である副会長の成田一衛先生(D58)からは、まず、1月1日に発生した令和6年能登半島地震における新潟大学近辺の被害状況、被災地域へのDMATの派遣状況などが報告されました。また、学士会、医学部の人事や地域医療を担う若手医師を育成するために地域枠医学部定員が増員されたことなどをもご紹介されました。続いて有壬会東京各支部長からの報告があり、東京支部全体では約600名の会員がいるものの、若手会員の参加は少なく、各支部とも活動は低調であるとのことでした。こうした報告を受けて、蒲谷先生からは、現在、地理的な区分けで支部活動がなされているが、世代によって所属する組織が異なる現状を踏まえ、今後は世代別に分けて活動するべきではないか、との提言がなされ、今後検討してゆくこととなりました。引き続き、特別講演に移り、講演1では、東京大学医科学研究所附属幹細胞治療研究センター教授の岩間厚志先生(D62)より「造血器腫瘍の新規治療標的の探索」との演題でご講演いただきました。細胞のがん化において重要な役割を果たすDNAのメチル化であるが、MDSやAMLの治療では、脱メチル化剤が上市され使用されている。これら薬剤の耐性出現にTOPORSが関与しており、この発現制御が耐性克服の一つの解決策であると述べられました。また、多発性骨髄腫はCD138の発現においてヘテロジェネシティーを有し、可塑性を有すること、CD138陰性多発性骨髄腫は治療抵抗性を有する細胞を含むこと、CD138陰性治療抵抗性細胞にはスプライシング阻害剤の治療効果が期待できることなどをお示しいただきました。がん化の過程を解き明かすという、まさに基礎研究の醍醐味を短時間にまとめられたご発表に、一同感銘を受けました。講演2では新潟大学大学院医歯学総合研究所救命医学分野教授、西山慶先生(FH07)より「働き方改革に打ち勝つための世帯支援の立場に立った3×3フレームマネジメント」というテーマでお話しいただきました。まず、労働負荷の高い救命救急の分野では、離職するスタッフのため、地域医療が崩壊する事例が多発していることをお話されました。しかし、離職の原因はスタッフの世帯環境によって大きく異なり、例えば、共働き・扶養者ありの世帯では、育児中は収入減少のカバーはできても、頻回の転勤は難しく、子女の送迎など融通が利かない時間帯があり、こうした空間、時間的な制約を考慮しないと離職につながるとのことでした。一方、非共働き・扶養者ありの世帯では、転勤や子女の送迎などは配偶者が対応することでカバーできるが、働き方改革で外勤が制限されると、家計の収入に大きな影響を与え、いわゆる経済的制約が離職のきっかけとなってしまうとのことでした。このように世帯環境を考慮した人事を行うことで、医局員の労働環境を改善し離職を防ぐ取り組みされているとのお話でした。世帯構成の異なるメンバー間の対立に対しては、「公平」と「平等」をはき違えないようマネージメントすることが重要、との西山先生のご指摘はまさに慧眼であり、特に管理職として日々人事問題に悩む会員にとっては非常に有益なご講演でした。その後、会場を移して、懇親会が行われました。参加者は45名とコロナ禍前と同じような盛況を取り戻す会となりました。学士会副会長の吉井光信先生(D47)の開会の挨拶の後、名誉会員高木敏之先生(D42)の乾杯の発声により宴は開始となりました。料理もさることながら、「獺祭」、「森伊蔵」など、普通の居酒屋ではなかなかお目にかかることができないお酒などが用意され、会は大いに盛り上がりました。最後に次回合同総会の世話人である三多摩支部長、大倉幹彦先生(D49)の閉会の辞で会はお開きとなりました。